※この記事は2024年5月15日にX(Twitter)に投稿した記事です。
「衣食足りて礼節を知る」という言葉があります。
言葉通り、人は衣食等の最低限の生活が保障される状況じゃないと、礼儀や節度を守ることはできないといった言葉ですね。
表題の言葉「貧すれば~」は、「衣食足りて~」をもっと掘り下げた言葉になるかと思います。要約すると
「貧乏だと判断力・理解力が鈍くなる」
「判断力・理解力が鈍くなれば行き詰まる」
「行き詰まると思いがけない活路が開けてくる」
といった感じでしょうか。
「あれ?」と思った方。そう、この言葉の最後はとても前向きですよね。
この3つの言葉は、それぞれ出典が違う言葉で、それを誰かがうまいこと繋げた言葉みたいなんです。(間違ってたらごめんなさい)
■「窮すれば通ず」は易経
「窮すれば通ず」は中国古典の「易経」に出てくる言葉です。「窮地に追い込まれると、かえって名案が浮かび、行くべき道が開けるものだ」という意味です。
■「貧すれば鈍する」は「衣食足りて礼節を知る」の言い換え?
「貧すれば鈍する」の正式な出典は不明ですが、同意語の「衣食足りて礼節を知る」の出典は分かっています。「斉」の政治家「管仲」の「管子」が出典です。
管仲は「管鮑の交わり」で有名ですよね。管仲と鮑叔牙の友情、「私を生んだのは父母だが、父母以上に私を知る者は鮑叔である」とか素晴らし…話が反れるので戻します。
その管仲が王様に「国を強くするなら、まず内政しよう」と言い、王様が「なんで?」と聞くと「食料があれば礼儀と節度をわきまえるようになり、衣服や食料が豊かであってこそ、名誉と恥辱の違いを考えるようになる」と説明したそうです。
これが「衣食足りて~」の原本、「貧すれば~」はこの言葉からの引用では?と言われています。「論語」の「小人窮すれば斯に濫す」が由来って説もありますね。
■「鈍すれば窮す」は論語?
「鈍すれば窮す」も正しい出典は不明。ただ、これも「貧すれば~」由来の一説と考えられている「孔子」の「論語」、「小人窮すれば斯に濫す」が由来と考えられています。
孔子が弟子たちと一緒に戦争に巻き込まれ、食料もなく苦しんでいる時に弟子の一人が皮肉交じりに孔子に問います。
「君子も亦窮すること有るか」(立派な人でも窮地に陥ることはあるんですか?)
それに対して孔子は
「君子固より窮す。小人窮すれば斯に濫る。」(当然あるよ。でも器が小さい奴はすぐに取り乱すね)
と皮肉返しします。聖人なのにキツい言葉ですね。まあ孔子は自らを「聖人」なんて一言も言ってないですし。
これが「鈍すれば~」の引用元では?と言われています。「貧すれば鈍する 鈍すれば窮す」までは、これが出典かもという感じです。
なんで、こんな古典を引っ張り出したかと言うと、今朝のフィッシング詐欺が原因です。
どうも昨今の日本は「貧すれば鈍する 鈍すれば窮す」の状態が続いているように思います。
本来なら「窮すれば通ず」となりたいところですが、窮したところで詰まってしまい、色々と取り乱したり、犯罪に走ったりする人が増えてきたように思います。
そういう自分も心に余裕のない現代人です。
なので軽く無視できるフィッシング詐欺にも、「何なの!」とイライラしてしまったりします。
そんな自分が言うのもなんですが、心に余裕を持って「窮すれば通ず」の心構えで今の状況を乗り越えたいですね。
その為には、管仲が言うように、まずは内政(経済)を良くしなければ。
経済が良くなれば心も豊かになり、貧しさが原因で起きている色んな社会問題も減っていくと信じたいですね。
※画像は「守屋洋」先生の「中国古典がわかる!」からです。